◆英米文化学会 第152回例会のお知らせ
                (例会担当理事: 河内裕二)

日時:成29年3月11日(土)午後3時00分〜6時00分
   午後2時30分受付開始

場所:日本大学歯学部 3号館 2階 第5講堂
※アクセスなどは日本大学歯学部の公式サイトをご参照ください。


懇親会:会場: 3号館地下1階ラウンジ
時間:午後6時〜8時 懇親会のみの参加も歓迎いたします。
会費:2,000円



開会挨拶
英米文化学会会長 曽村充利 (法政大学)
(3:00−)

研究発表
1. 『チャイルド・ハロルドの巡礼』と後世の編集者 ―編集本にみる読書の変容―
                      (3:10−3:40)
    発表 山口裕美(津山工業高等専門学校)
    司会 山根正弘(創価大学)

2. 『西欧人の眼の下に』におけるキャラクター分析 ―カリカチュアから悲劇へ―
                      (3:40−4:10)
    発表 渡邊 浩(就実大学)
    司会 塚田英博(日本大学)

----- 休憩(4:00−4:20) -----


3. Using HelloTalk to promote English language learning: A case study
                    (4:20−4:50)
    発表 Tan Seoh Koon (Josai University)
    司会 安山秀盛(城西大学)

4. シェイクスピア作品のコミックス版における登場人物の表象−マクベス夫人の場合
                      (4:50−5:20)
    発表 佐藤由美(常葉大学)
    司会 越智敏之(千葉工業大学)

閉会挨拶
    英米文化学会副会長 君塚淳一 (茨城大学)
                    (5:20−)

臨時総会
                    (5:20−5:50)
懇親会
                    (6:00−8:00)




研究発表抄録

1.『チャイルド・ハロルドの巡礼』と後世の編集者―編集本にみる読書の変容―
山口裕美(津山工業高等専門学校)

 ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron, 1788-1824)の『チャイルド・ハロルドの巡礼』(Childe Harold’s Pilgrimage, 1812-1818)は、発表時の刊行部数とその読者層について注目がなされてきた。一方で、作家の死後、多くの編集者によって、それぞれに本文構成が編纂され、複数の編集本が刊行された。特に、19世紀後半以降、20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ地域のみならず、インドやオーストラリアなどの被植民地地域の研究者による編集本も刊行された。
 本発表の目的は、これらの編集本の差異を比較し、編集者が意識した読者層の変容を探るものである。収集した編集本を年代順に配列し、本文の構成(編集者による編集目的、作家および作品の解説、本文の配置、注釈の位置など)の変遷を追う。時代経過に伴う変遷により、編集者たちが想定した読者層の変容について考察する。


2.『西欧人の眼の下に』におけるキャラクター分析 ―カリカチュアから悲劇へ―
渡邊 浩(就実大学)

 コンラッドはテロリズムにまつわる悲劇的な長編作品『西欧人の眼の下に』(Under Western Eyes, 1911)に先立ち、短編作品「無政府主義者」("An Anarchist", 1906)と「密告者」("The Informer", 1906)をHarper's Magazineに発表している。『西欧人の眼の下に』における主人公ラズーモフ(Razumov)に注目してみると、「密告者」に登場するセヴリン(Sevrin)とはいくつかの共通点があり、また作品の構成と描写に関しても互いに共通点が見出される。また「無政府主義者」に登場するポール(Paul)も、その生き方の描写に関してはラズーモフを彷彿とさせる部分がある。またこれらの短編には、全体的に人物描写と物語の展開にカリカチュアを感じさせる要素も含まれている。この研究発表では、『西欧人の眼の下に』と上記の短編「密告者」並びに「無政府主義者」を比較分析し、前者の人物描写とプロット構成に、後者の二編の短編作品がどのようなモチーフとなり影響を与えているのか、またカリカチュア的要素がどのように悲劇の構成に転換されているのかという点を考察する。


3. Using HelloTalk to promote English language learning: A case study
Tan Seoh Koon (Josai University)

 Mobile assisted language learning (MALL) has caught the attention of educators and researchers in the recent years. However, there isn’t sufficient empirical studies to prove its effectiveness in promoting English language. This case study which was carried out with 10 Japanese university students, aimed to investigate if HelloTalk, a language exchange learning application, can promote self-regulated learning among the participants. Participants are encouraged to freely use all the features of the mobile application, which include text messages, voice messages, voice-to-text, text-to-voice, translation, free calls, favorites language information (database of foreign language words, sentences, audio files, grammar corrections, or pictures), and grammar corrections, moments and comments, to assist their English learning outside of the classroom. Data is collected from participants’ public posts in the application and interviews. The results suggested that HelloTalk provided a platform for participants to use English more frequently. The opportunity to interact with native speakers in English and the immediate assistance they received from other application users during their learning of English motivated participants and promoted self-regulated learning. However, result also suggested that language teachers should be aware of the social networking features of the application which might be misused for non-language learning purposes.


4.シェイクスピア作品のコミックス版における登場人物の表象−マクベス夫人の場合
佐藤由美(常葉大学)

 イギリスではシェイクスピア作品をコミックスやグラフィックノベル化したものが数多く出版されている。この中には教育者用のガイドが書籍ないし出版社のウェブサイト上の特設ページといった形で手に入るものもある。背景にはイギリスのナショナルカリキュラムでは、義務教育終了時までにシェイクスピア作品を最低2編読むことが義務づけられているという事実がある。そのことを踏まえると、一部のコミックス版の目的が教育であるという印象が強まり、娯楽性やテーマ解釈にどの程度重要性が与えられているかが疑問となる。本発表では多く出版されている作品の一つ『マクベス』の代表的なコミックス版を何点か取り上げ、悪役と見做されることの多い登場人物の一人マクベス夫人に注目する。夫人の描かれ方、およびそれが各々の作品中でもたらす効果を考察することにより、教育的要素を持つコミックスが表現しているものの多様性を論じる。