◆英米文化学会 第140回例会のお知らせ
日時:平成25年3月9日(土)午後3時00分〜6時00分
午後2時30分受付開始
場所:日本大学歯学部4号館地下1階セミナー室
(JR 御茶ノ水、営団千代田線新御茶ノ水、都営新宿線小川町他下車)
懇親会:会場:日本大学歯学部3号館地下ラウンジ
時間:午後6時〜8時 懇親会のみの参加も歓迎いたします。
会費:1,500円
開会挨拶
英米文化学会会長 小野昌 (城西大学) (3:00−)
研究発表
1. チャールズ2世統治時代以降の茶に関する語彙 (3:10−3:40)
―イギリス茶文化伝統の始まりを背景として
発表 スフバトルイン・サルラ (大東文化大学大学院)
司会 北林光 (大東文化大学)
2. ロイヤル・オペラ・ハウスにおけるバレエ・リュスの受容 (3:40−4:10)
発表 蒔田裕美 (法政大学)
司会 藤岡阿由未 (椙山女学園大学)
休憩 (4:10−4:20)
3. James A. Herneの初期戯曲にみるアメリカン・リアリズムの萌芽 (4:20−4:50)
発表 古木圭子 (京都学園大学)
司会 河内裕二 (明星大学)
4. 井上ひさし『吉里吉里人』におけるイギリス・ユートピア文学の技巧 (4:50−5:20)
発表 加藤千博 (横浜市立大学)
司会 木村志穂 (法政大学)
(5:20−)
閉会挨拶
英米文化学会副会長 曽村充利 (法政大学)
研究発表抄録
1. チャールズ2世統治時代以降の茶に関する語彙
―イギリス茶文化伝統の始まりを背景として
スフバトルイン・サルラ (大東文化大学大学院)
茶を飲む習慣は中国から欧州諸国に伝来し、その稀少さと異国的で奇異なイメージが拍
車をかけ、ヨーロッパの人々の日常生活の一部になっていった。英国においては、チャー
ルズ2世(Charles II)の時代に大英帝国が世界へ拡大し、キャサリン・オブ・ブラガンザ
(Catherine of Buraganza)との結婚を背景としてイギリス茶文化の伝統が始まる。輸入さ
れた日用品は言語的変化に影響を与え、「茶」にあたる「tea」についても英語に借用された
直後から、その他の英単語と結び付き、teaspoon, teacup, teapotなどの語彙を創り出し、
それらは今日も残存している。本発表では、チャールズ2世の在位期間とその直後にわたって、
急速に発展していった「tea」にまつわる新しい語彙の発展とその使用法について論じる。 "
2. ロイヤル・オペラ・ハウスにおけるバレエ・リュスの受容
蒔田裕美 (法政大学)
ディアギレフ (Sergei Diaghilev, 1872-1929) 率いるバレエ・リュス (Ballets Russes)
の英国初演 (1911年) は、ロイヤル・オペラ・ハウスにおいてである。当時、バレエは低級な
娯楽と考えられていたが、バレエ・リュスが生み出した質の高い総合芸術は、上流階級やブル
ームズベリー・グループを中心とする知識人を魅了した。バレエ・リュスは主に前衛主義に
焦点が当てられてきたが、実験的な作品を創作すると同時に、クラシック・バレエを西欧に紹介
した功績がある。ロイヤル・オペラ・ハウスを本拠地とするロイヤル・バレエ団は、実は歴史が
浅く、バレエ・リュスの影響によって礎が築かれたのである。本発表では、バレエ・リュスの
基盤であったクラシック様式こそが、バレエが不毛の地であった英国に影響を与え、急速に英国
独自のバレエを生み出すに至った経緯を考察する。"
3. James A. Herneの初期戯曲にみるアメリカン・リアリズムの萌芽
古木圭子 (京都学園大学)
ジェームズ・A・ハーン (James A. Herne, 1839-1901) は、その円熟期の戯曲Margaret Fleming
(1890) において、アメリカ演劇界にリアリズムをもたらした功績を称えられた一方、同時期に
アメリカにその戯曲が紹介されたヘンリック・イプセン(Henrik Ibsen, 1828-1906) の模倣を
しているとも批判された。しかし、初期戯曲Hearts of Oak (1879) には、悪役やヒーローの不在、
ニューイングランドの漁師街に根付く地域色など、「海洋劇」と名付けられた後の戯曲群に通じる
リアリズムの要素が既に色濃くみられる。だが、本戯曲がメロドラマとされる背景には、大衆作家
と位置付けられていたデーヴィッド・ベラスコ (David Belasco, 1853-1931) が共作者であることも
関わっていると言える。そこで本発表では、ベラスコのHearts of Oakへの関与も考慮しつつ、ハーン
の初期戯曲にみられるアメリカン・リアリズムの独自性を論じる。"
4. 井上ひさし『吉里吉里人』におけるイギリス・ユートピア文学の技巧
加藤千博 (横浜市立大学)
井上ひさしが1981年に出版した長編小説『吉里吉里人』では、東北地方のとある村が日本国から独立
する2日間のドラマが描かれている。そこには脱原発、農業政策、自衛隊問題などのテーマが扱われて
おり、それらは今まさに日本が直面している問題でもあり、あたかも作者は30年後の大震災と日本の
混乱を予見したかのようである。井上作品にはユートピアをモチーフとしたものが幾つかあるが、この
作品ほどイギリス・ユートピア文学の伝統をしっかりと受け継いだものはない。本発表では、イギリス・
ユートピア文学のジャンル的形式と特徴をトマス・モア(Thomas More)の『ユートピア』(Utopia,
1516)とジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)の『ガリヴァ―旅行記』(Gulliver’s Travels,
1726)から概観したうえで、『吉里吉里人』に見られるユートピア文学の技巧について論じ、井上ひさし
が本作品に込めたメッセージを解き明かす。"
*例会会場(日本大学歯学部)
例会は4号館地下・懇親会は斜向かいの3号館地下です。
(JR 御茶ノ水、営団千代田線新御茶ノ水、都営新宿線小川町他下車)案内マップ 日本大学歯学部HP
連絡先 例会担当理事 河内裕二 YujiKawauchi(at)ses-online.jp