大会担当理事よりのお知らせ
第33回英米文化学会大会概要					

第33回大会

日時:平成27年9月12日(土) 場所:昭和女子大学学園本部館大会議室
〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57
会場<昭和女子大学>の詳細はこちら
当日会費(非会員) 500円(一般)、300円(学生)、懇親会費4,000円

受付開始 9:30 - 開会の辞 9:50 - 10:00 会長 曽村充利 (法政大学) <研究発表> 10:00- 10:30  身体部位詞の空間・時間概念への意味拡張:日・英・西語対照 発表者 根木英彦 (大東文化大学大学院) 司会者 北林光 (大東文化大学) 10:30-11:00  作品から考察するホーソーンの変化する創作活動への姿勢 発表者 笠原慎一朗 (関東学院大学) 司会者 塚田英博 (日本大学) 休憩11:00-11:10 11:10-11:40  エンプソンにおける「マーヴェルの庭」 ―曖昧と牧歌― 発表者 深山美樹(昭和女子大学) 司会者 高野美千代 (山梨県立大学) 11:40-12:10  フランシス・キングの「それぞれの大義」の語りにおける空白と二重性 発表者 川田伸道(同志社大学) 司会者 永田喜文 (明星大学) 昼食 12:10-13:00 分科会報告 13:00-13:40  時と場所、そして言語ー比較文学を考えるー
比較文学分科会
発表者 菅野智城(法政大学)、河内裕二(明星大学)、式町眞紀子(法政大学)、中村一輝(協同出版・日本英語検定協会)、水野隆之(早稲田大学) 休憩 13:40-13:50 13:50-14:50 基調講演   「シェイクスピア時代の劇場文化―グローブ座を中心に」 門野泉 (清泉女子大学名誉教授) 休憩 14:50-15:00 ワークショップ 15:00-16:30     「ロンドンの劇場文化―英国演劇史―」 司会 藤岡阿由未 (椙山女学園大学) 発表者 門野泉(清泉女子大学名誉教授)、赤井朋子(神戸薬科大学)、 蒔田裕美(法政大学)、西尾洋子(明治大学) 閉会の辞16:30-16:40 理事長 大東俊一 (人間総合科学大学) 懇親会 17:00-19:00 ソフィア(学生食堂)     懇親会費 4,000円

<抄録>  身体部位詞の空間・時間概念への意味拡張 ―日・英・西語対照―   根木 英彦 (大東文化大学大学院) 本発表は、3言語の身体部位詞を対象とし、その時空間領域への意味拡張の動機付けを明らかにしようとするものである。
動機として、身体部位の<移動可能性>(「足がはやい」、swift-footed、pies rapidos)・<方向性>(「目前」、in front of one's eye、delante de los ojos)
・<位置性>(「背後」、back in the 80's、experiencia sus espaldas)・<形状性>(間一髪、by a hair、por un pelo)などがあることを指摘する。
事例を検討した結果、3言語において、空間領域を含めた多義性を有している身体部位詞は多いが、その意味が特に時間領域にまで
拡張している語には制約があることが分かった。体部位を大きく外的部位(手・足など)と内的部位(心臓・肺など)に分けると、
外的部位の方が多くの(時空間領域を含めた)慣用表現を有する。内的部位は、時空間概念よりも、感情・気質等に関わっている。
これは、人間の諸活動において、外的部位の方が知覚されやすく、言語においても概念化されやすいのではないかと考えられる。
作品から考察するホーソーンの変化する創作活動への姿勢 笠原慎一朗(関東学院大学) 大学を卒業してから3年後に、ナサニエル・ホーソーン(Nathaniel Hawthorne, 1804-64)は、初めての小説『ファンショー』(Fanshawe, 1828)を自費出版した。
しかし出版後の回収と破棄の徹底さは、自分が納得しない作品を出版したという作家としてあるまじき行為を後悔する気持ちがあったことを示しているという観点から論を進める。
経済的自立を焦る気持ちに加えて、創作し、校訂する重労働を繰り返すなかで、その作業の精神的な過酷さは、
少しくらいなら書き直しの手間を省いても良いのではないかという誘惑になった可能性がある。
その結果、『ファンショー』を納得のいく作品に仕上げる作業を怠ることになったのだと思われる。
『ファンショー』以降は、ホーソーンは自分の納得のいかない作品は出版していない。
しかし1850年出版の『緋文字』(The Scarlet Letter, 1850)の創作までは、ホーソーンは少しくらいなら手抜きをしても
良いのではないかという誘惑に負けそうになる気持ちを意識して、誘惑を退けるために自分自身を戒めるような作品をしばしば書いているという立場で分析を行う。
『緋文字』以前と以降の作品を考察し、誘惑を完全に克服し、作家として創作活動への気構えをもてるようになるまでの心の変化を作品を通して論述する。
エンプソンにおける「マーヴェルの庭」 ―曖昧と牧歌― 深山 美樹 (昭和女子大学) ウィリアム・エンプソン (William Empson, 1906-84) はアンドルー・マーヴェル (Andrew Marvell, 1621-78) の詩を数多く『曖昧の七つの型』(1930)と、
『牧歌の諸変奏』(1935)で、晩年にはUsing Biography (1984) の'Natural Magic and Populism in Marvell's Poetry,'へ展開し、生涯を通じマーヴェルに注目を寄せている。
それ故にマーヴェルに関する探究は、彼の批評の歩みをたどる。
特に『牧歌の諸変奏』の第4章「マーヴェルの庭―矛盾を解消することにより理想的な単純に至ること―」には、
所収の第7章「不思議の国のアリス―牧童としての子供―」と共通するエンプソン独特の「牧歌」と「曖昧」の表現が頻繁に登場する。
しかし、第4章で用いられた「曖昧」は、『曖昧の七つの型』で提唱された「曖昧」の解釈と異なる。この「曖昧」の分析が、
エンプソンがどう「牧歌」を捉えようとしたか、そして、それをどう発展させたかを紐解く鍵となる。
「曖昧」と「牧歌」の関係性を「マーヴェルの庭」を用いて論じる。
フランシス・キングの「それぞれの大義」の語りにおける空白と二重性 川田 伸道 (同志社大学) フランシス・キング (Francis King, 1923-2011) の短編小説「それぞれの大義」("Causes", 2005) において、主人公の男性は、
語りの対象である亡き双子の姉に対して曖昧なスタンスをとる。彼は、姉の人生が尊い大義によって導かれていたとする一方、
それは彼女が息を引き取った部屋と同様、「散らかった」もの ("mess") であったと批判する。姉と一心同体だった
子供時代の記憶をたどる過程で、彼の語りは姉に対する共感を帯びてくるが、小説の終わりでは、姉弟の一体感の象徴である
遺品の木彫人形を、彼は車の窓からふいに放り投げてしまう。
このように、本作品においては、共感と拒絶、現実と夢想、現在と過去という対立的要素が、双子という設定を象徴として主人公の語りに織り込まれ、
彼の姉に対する想いはある種の決着や到達を迎えることなく、読者は空白の状態に置かれることとなる。
このような観点から本発表では、「それぞれの大義」を中心として、キングの語りの特異性を分析する。
<分科会報告> 時と場所、そして言語 ― 比較文学を考える ― 菅野智城(法政大学)、河内裕二(明星大学)、式町眞紀子(法政大学)、 中村一輝(協同出版・日本英語検定協会)、水野隆之(早稲田大学) 外国文学と日本文学をその影響関係の中で比較検証し、その成果を発表することを目的とする比較文学分科会が発足した 。
従来の伝統的文学研究は、対象となる作品や作家を精確に理解することを目指してきた。そのような求心的手法が色褪せたり
廃れたりするものではないことは、文学研究の歴史が証明している。しかし、作品や作家を中心として、そこから伸びる時間軸と空間軸、
すなわち通時性と共時性を辿る遠心的手法もまた、多角的、複眼的な文学研究のために求められて然るべきであろう。
今回、本分科会の発足にあたり、その活動内容を学会内に周知すべく、参加者の顔ぶれ、研究の対象および方向性を報告するとともに、
英米文学と日本文学の枠組みにとらわれず、作品と作家を取り巻く時間、場所、そして言語を通して比較文学を考える。
<基調講演> 「シェイクスピア時代の劇場文化―グローブ座を中心に―」 門野 泉(清泉女子大学名誉教授)  1599年、ロンドンのテムズ川南岸にグローブ座(Globe Theatre)が開場した。このO字型の木造劇場で、シェイクスピア(William Shakespeare)は
俳優、座付き作家として活躍するのみならず、株主の一人として劇場経営にも参画し、演劇史上に名を留める「シェイクスピア時代」を築いたのだった。
シェイクスピアの本拠地とも言えるグローブ座は、1613年、『ヘンリー八世』(Henry VII)上演中に失火し、灰燼に帰した。翌1614年に劇場は再建されたが、
シェイクスピアは既に故郷への引退を視野に入れていたようだ。
劇場人シェイクスピアと共に歩んだグローブ座には、一体、どのような観客が来場していたのだろうか。劇場は当時の社会においてどのような役割を果たし、
どのような存在とみなされていたのだろうか。シェイクスピアが生きた時代に思いを馳せながら、グローブ座を介してロンドンの劇場文化の一端に触れてみたい。
<ワークショップ> ロンドンの劇場文化 ―英国演劇史― 藤岡阿由未(椙山女学園大学)、門野泉(清泉子大学名誉教授)、 赤井朋子(神戸薬科大学)、蒔田裕美(法政大学)、西尾洋子(明治大学) 英米文化学会編『ロンドンの劇場文化―英国近代演劇史―』(藤岡阿由未監修、門野泉、藤野早苗、赤井朋子、蒔田裕美、西尾洋子著)を
2015年5月に朝日出版社より刊行した。本書は、ロンドンの演劇について、劇場という構造物からアプローチし、時間とともに消えゆく過去の演劇を検証している。
19世紀末から20世紀初頭のロンドンの演劇文化を炙り出そうとする本書は、これまであまり光が当たらなかった領域を開拓する演劇研究であると同時に、
過去の劇場へのタイムトリップの誘いでもある。
今回のワークショップでは、本書の内容を簡単に紹介するとともに、本全体を横断するいくつかの共通テーマを取り上げて各章の執筆者が論じる。
フロアとの意見交換も行い、19世紀末から20世紀初頭の「ロンドンの劇場文化」はいったいどのようなものと言えるのか、その特色を本ワークショップによってさらに考察したい。 お問い合わせは大会担当の松谷(AkemiMatsuya@ses-online.jp)まで、


大会担当理事 松谷明美 AkemiMatsuya(at)SES-online.jp


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