9月6日(土) 受付開始 <13:00> 開会の辞 <13:30 − 13:40> 英米文化学会会長 田嶋 倫雄 (日本大学) 研究発表 1.情報共有ができないことから生れるゴシック ―ホーソーン文学からの考察 <13:40−14:20>
発表者 笠原 慎一朗(昭和女子大学)
2.戦後の沖縄歌劇―乙姫劇団の時代幻想歌劇『夏の夜の夢』 司会者 佐野 潤一郎(環太平洋大学) <14:20−15:00>
発表者 石塚 倫子(東京家政大学)
小休憩 <15:00−15:10>司会者 藤岡 阿由未(椙山女学園大学) 3. 『大いなる遺産』における幻燈の影響 ―ミス・ハヴィシャムあるいはファンタスマゴリアの幽霊 <15:10−15:50>
発表者 原田 昂(就実大学)
休憩 <15:50−16:10>司会者 水野 隆之(早稲田大学) シンポジウム <16:10−18:10> 近世英国におけるアイデンティティの探求 司会・発表:高野 美千代(山梨県立大学) 発表:曽村 充利(法政大学) 菅野 智城(鶴岡工業高等専門学校) 佐藤 正幸(山梨大学) 佐藤 幸治(翻訳家) Angus Vine(University of Stirling, UK) 石川 英司(城西大学) 9月7日(日) 受付開始 <9:20> 研究発表 4. 「祖国訪問」物語にみる思春期アジア系アメリカ人のアイデンティティ再構築 <9:30−10:10>
発表者 天野 剛至 (常葉大学)
5. 初級レベルの日本人大学生を対象としたCLTに基づくパラグラフ・ライティング指導の有効性司会者 戸田 由紀子(南山大学) ―「英問英答」と「日本語設計図」を用いて <10:10−10:50>
発表者 樋口 晶子(四日市大学)
休憩 <10:50−11:10>司会者 石川 英司(城西大学) 6.アンティオキアからエフェサスへ―『ペリクリーズ』における主人公の旅路が示すもの <11:10−11:50>
発表者 式町 眞紀子(法政大学)
司会者 曽村 充利(法政大学) 閉会の辞 <11:50- 12:00> 英米文化学会理事長 佐野 潤一郎(環太平洋大学) 1日目 9月6日 情報共有ができないことから生れるゴシック ―ホーソーン文学からの考察― 笠原 慎一朗(昭和女子大学) Nathaniel Hawthorne (1804-64) は、作品の中で登場人物たちが、他者と情報共有ができず、お互いの考えていることが理解できないため、相手が何を考えているのかわからないという状況がゴシック的な要素を生み出すケースを書いている。“The White Old Maid” (1835)、”The Wedding Knell” (1836)、 “The Minister's Black Veil” (1836)、“The Prophetic Pictures” (1837)、“Rappaccini's Daughter” (1844)、The Marble Faun (1860)などのゴシック物語の登場人物たちは、他者には知られたくない秘密や感情を抱えている。その秘密や感情に登場人物たちがどのように向き合い、その情報を他者と共有できるかどうかによって、その後の人生を好転させる場合と悪い方向へ向けてしまう場合とがある。またHawthorneの作品には、他者と情報共有ができるかできないかによって、物語のゴシック的な要素が強まったり、弱まったりする効果が見られる。その観点も分析しながら、Hawthorneが登場人物たちを通して人間の心を書くために、どのようにゴシック的な要素を取り入れたのか考察する。 戦後の沖縄歌劇―乙姫劇団の時代幻想歌劇『夏の夜の夢』 石塚 倫子(東京家政大学) 沖縄歌劇は明治末期に沖縄ではじめて出現したジャンルで、歌・踊り・所作・セリフから成る沖縄独自の芝居様式である。歌劇は第二次世界大戦前まで那覇の遊郭・辻(チージ)にある劇場で人気を博した。しかし、大戦の大空襲や米軍上陸とともに、芝居小屋は街と共に焼失してしまう。戦後、収容所生活を余儀なくされた役者や芸能者たちは、間もなく米国軍政府の認可を受けて劇団を作り、各地の粗末な露天の劇場で活動を再開する。 今発表では、この時期の歌劇を得意とする女性のみの「乙姫劇団」の創設と活躍を、かつての遊郭(辻)にいた娼妓(ジュリ)たちのとの関係から読み解く。さらに、近年、アジアにおけるシェイクスピア翻案作品の点でも注目され始めた、乙姫劇団の人気作『夏の夜の夢』 (1960) について、この作品がどのように翻案され人気を得たかを分析する。その際、ジュリや女性に纏わる沖縄独自の文化的背景、およびこの作品の劇構造の視点から考察する。 『大いなる遺産』における幻燈の影響―ミス・ハヴィシャムあるいはファンタスマゴリアの幽霊 原田 昂(就実大学) 本発表では、『大いなる遺産』(Great Expectations, 1860-61)と幻燈(the magic lantern)の関係性を、ミス・ハヴィシャム(Miss Havisham)の描写を中心に分析する。作家チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)が幻燈に関心を抱き、作品作りに利用したことは、これまでも指摘されてきた。しかし、それらの研究は主に、幻燈を映画の前身とみなし、ディケンズ作品の動画的な性質に焦点を当てる。本発表はディケンズが、幻燈が持つ他の特徴を文章表現に応用したことに注目する点で新しい。幻燈は、光を当てることで画像を離れた場所に映し出す。この機能は超自然的な演出と相性が良く、ファンタスマゴリアと呼ばれる幽霊ショーが幻燈の用法として人気を集めた。これらの特徴は、『大いなる遺産』の中で利用される。物語の中でミス・ハヴィシャムは、幽霊のようだと表現され、本人がいない場所で度々目撃される。本発表は、そのような場面と幻燈の関連性を明らかにする。 シンポジウム 近世英国におけるアイデンティティの探求 司会・発表:高野 美千代(山梨県立大学) 発表:曽村 充利(法政大学) 菅野 智城(鶴岡工業高等専門学校) 佐藤 正幸(山梨大学) 佐藤 幸治(翻訳家) Angus Vine(University of Stirling, UK) 石川 英司(城西大学) 本シンポジウムでは、16世紀から17世紀のイギリスにおいて、国と国内各地域のアイデンティティの探究がどのように発生し、歴史家や科学者そして詩人たちの手によって展開したのかをテーマとする。具体的には、ウィリアム・カムデンがヨーロッパ諸国に対して英国のナショナルアイデンティティをアピールした大作『ブリタニア』(初版1586年)をはじめ、カムデンの流れを汲む、あるいは同種の思潮に沿った作品群を扱い、英国の宗教的アイデンティティ、民族的アイデンティティ、国と国内各地域の地理的・歴史的アイデンティティ等を考察する。本シンポジウムでは、想像文学(想像による創作物)の枠を超えた作品群を含め、具体的にはカムデンをはじめ、マイケル・ドレイトン、ウィリアム・ダグデール、ロバート・プロット、アイザック・ウォルトン、ジョン・ミルトン、ベン・ジョンソンの作品を分科会メンバーが論じる。 2日目 9月7日(日) 「祖国訪問」物語にみる思春期アジア系アメリカ人のアイデンティティ再構築 天野 剛至(常葉大学) アジア系アメリカ人の若者を主人公とするYA小説において、「祖国訪問」は自己と出自の再認識を促す重要な契機として描かれることがある。Emily X. R. Pan (b. n.d.) の The Astonishing Color of After (2018) および Kat Zhang (b. 1991) の The Emperor’s Riddle (2017) は、親や祖父母のルーツを辿る旅のなかで、主人公たちが自身のアイデンティティと向き合い、それを再構築していく過程を描いた作品である。 本発表では、これら二作品における「祖国訪問」ナラティブの特性を明らかにし、ホミ・バーバの概念「“中間地点の”空間(“in-between” space / third space)」を手がかりに、主人公たちがいかにして複数の文化にまたがる自己理解に向き合い、交渉し、変容させていくのかを考察する。とりわけ、記憶、喪失、言語、家族関係といった要素が自己認識の過程にいかに関与しているかを分析することで、トランスナショナル/文化横断的な経験がもたらすアイデンティティの多層性と動態性を明らかにする。 初級レベルの日本人大学生を対象としたCLTに基づくパラグラフ・ライティング指導の有効性 ―「英問英答」と「日本語設計図」を用いて 樋口 晶子(四日市大学) まとまった量の英語で自分の意見を書くことは、コミュニケーション能力に関わる複数の能力、特に思考力と深い関連があり、学習の初期段階からパラグラフ・ライティング(PW)練習を取り入れることが望ましいが、初級レベルの学習者にとっては難しい。理由として、パラグラフ構成を知らないことや、テーマを決められないために、書くことに対する意欲不足が考えられる。 自分の意見を英語で書いて伝える意欲の向上を目的として、「英問英答」と樋口による「日本語設計図」を用いたPW指導を行い、授業前後の学生の意識と英作文を調査してきた。本発表では2023年度の結果(日本人大学生30人を対象)を中心に紹介する。16回の授業前後で作文の総語数平均は45語から79語へ上昇した。約7割が「パラグラフを書くことに気が楽になった」と回答し、何度も練習したことを理由に挙げる学生が多い一方で、テーマを考える意欲不足という問題点も明らかになった。 アンティオキアからエフェサスへ―『ペリクリーズ』における主人公の旅路が示すもの 式町 眞紀子(法政大学) 『ペリクリーズ』(Pericles初演1608)はウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564-1616)による最初のロマンス劇であり、主人公ペリクリーズがアンティオキア、タイア、タルソス、ペンタポリス、エフェサス、そしてミティリニと、地中海を縦横に移動するスケールの大きさと躍動感に満ちた作品である。材源はジョン・ガワー(John Gower, 1330?-1408)の『恋する男の告解』(Confessio Amantis 14c後半) 所収の挿話に求められるが、ガワーを語り手に据え、主人公の恋愛遍歴と情欲に対する戒めを反映している程度であり、スケールの大きさを満たすまでには至らない。そこで本発表では、ペリクリーズが訪れる町は使徒パウロが宣教で訪れた町と重なることに着目し、『ペリクリーズ』にはパウロの伝道旅行の記録である『新約聖書』の「使徒言行録」も素材として組み込まれ、スケールの大きさが形成されていることを明らかにする。 |
問い合わせ:大会担当理事
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